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研究を理解する

学生が研究活動に取り組む意義

 現在、企業への就職を前提として大学院に進学する学生が大半でしょう。企業にとって研究活動とは、「自社しか保有していない知識」を生み出し、他社との差別化を可能にする行為です。これは明示的な「研究開発活動」に限定されず、事業について検討するあらゆる場面で生じ得るものです。そのため、このような知識創造力を備えた人材は、企業の事業を発展させるうえで、本質的に重要な役割を持ちます。

 博士課程に進学し、そしてアカデミックな研究者を目指す場合には、研究成果を早くから積んでおくことは、将来的なアカデミックの就職活動で有利に働きます。大学教員の採用基準は様々ありますが、その一つに論文数があり、学生時代に発表した論文は後にも効いてくることになります。

研究とは何か

 

 では、研究とは何なのでしょうか?平易に言えば、研究は「世界のとある真理を初めて明らかにするための営み」です。既存知識を体系化し、その上に新たな知見を積み重ねる点に特徴があります。研究は短期的な収益には直結しないものの、長期的には国レベルでは産業や国力の向上、企業レベルではイノベーション創出へと結び付きます。

 

勉強・調査との違い

 研究に触れたことが無い人や、研究活動の初心者が陥りがちなのが、研究を勉強や調査と混同してしまうことです。ここでは簡単に、それぞれの違いを説明します。

勉強とは、これまでの事実や知識を頭にインプットすることです。研究は、これまで知られていなかった事実や知識を明らかにし、アウトプットすることです。つまり、それぞれインプットとアウトプットという正反対な活動になります。

 調査とは、調査は、とある事柄を知るために、その対象を調べることです。研究活動においても調査を行うことはよくありますが、いくつかの大きな違いがあります。一つ目が、調査は研究と違って、それが既に知られていることかどうかを気にする必要がないということです。二つ目が、調査は研究領域を発展させる必要がありません。つまり、調査は調べる活動全般を指しますが、研究は研究領域において新規性があり、かつそれを発展させる活動に限定されます。

 

研究論文とは

 研究による成果は、論文として出版されて初めて正式なものとなります。ここでの論文とは、研究により明らかになった真理と、その発見に至る手順を記述した文章です。論文では、その発見が真実であり、かつ学術的に価値あるものであることを論証する必要があります。それゆえに、内容が難しくなる傾向にあります。

多くの学術分野では、ここでの正式な論文は、学術雑誌(英語ではJournalと呼ばれます)に投稿し、特定の手続きを経て受理され、出版が許されたものに限定されます。この正式な学術論文と、一般的な論文(何かを論じた文)とは明確な区別が必要であり、学術界では実際に明確な線引きが行われています。

 この特定の手続きは、査読(Peer review)システムと呼ばれます。簡単に説明すると、学術雑誌に投稿した論文は、学術雑誌の編集者(大抵は1~2名)と、編集者が割り当てた査読者(大抵2~4名)によりチェックされます。このチェックは、内容の適切さ、科学的な正しさ、学術的・実務的価値、文章の適切さなど多岐にわたります。このチェックの結果、多くの場合は掲載拒否(reject)となるか、修正後に再審査(revisionまたはR&R)という判定が下されます。再審査の場合には再度のチェックがあり、編集者と査読者がこれ以上の修正は不要であると判断した場合に、受理(accept)の判断が伝えられ、晴れて掲載されることとなります。

 レベルが高い学術雑誌になると、編集者と査読者のレベルやチェックの基準が上がり、受理の獲得が難しくなります。反対にレベルが低い学術雑誌では、トンデモな内容でも受理されることも多々あります。そのため、文献調査においては、学術雑誌のレベルを意識することも重要です。ただし、非常に革新性が高い研究は、むしろレベルが高い学術雑誌では受理を得にくいともいわれています。そのため、学術雑誌のレベルは重要でありつつも、論文の中身はきちんと自分の目で確認するという心得が必要です。

 

研究における大学の役割

 大学教員は学生に知識を教え、そして新たな知識を生み出すことが主な仕事です。つまり大学教員は教員であると同時に研究者です。大学院においては、大学院生はゼミや研究室で新たな知識を生み出す訓練を、教員から指導を受けて行います。

 大学の重要な使命の一つは、新たな知識を生み出し、学術論文を出版することでそれを公知化することです。学生を研究活動を通してこれを体験し、新たな知識を生み出す能力を育みます。この体験は、研究業界以外でもイノベーションを生み出す人材としての能力獲得に繋がります。

研究の基本

 ここまで説明したように、研究とは、これまでの研究で積み重ねられてきた知識に、新たな知識を積み重ねる行為です。そのため、以下の2つの事柄が必須となります。

 第一に、これまで積み重ねられてきた知識の内容を体系的に明らかにする必要があります。関連する先行研究をレビュー(検索して全部読む)して、これまでに明らかにされてきたことを整理します。

 第二に、妥当な手法により、新たな知識を発見して整理する必要があります。研究手法は、その研究分野で認められている方法を使用する必要があります。それにしたがって、データを収集し、分析し、結果を整理することになります。この方法には、統計分析、インタビュー調査、シミュレーション、実験など様々なものがあります。どういった手法がその研究領域で妥当なのかを理解するためにも、先行研究レビューを綿密に行うことが必須となります。

 

課題

 次の事項について改めて考えてみましょう。

  • なぜ大学院に行きたいのか?

  • なぜ研究に興味を持ったのか?

  • どのような研究内容をやってみたいのか?

  • どのような論文を書いてみたいのか?

それぞれ文章で整理をすることで、大学院進学の志望動機と、志望分野を特定してみましょう。

作成者:井上祐樹

​研究者情報:https://researchmap.jp/yuki_inoue

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