
面接の心得
論文の種類1(掲載媒体別)
一口に論文といっても、実は様々な種類があります。以下に代表的な種類の論文をまとめます。
●ジャーナル論文
ジャーナル論文は、学術誌(Journal)に投稿して、査読プロセスを経て掲載されたものを指します。狭義に言えば、学術業界における論文とはこれを指しています。特に、研究者の評価は論文の数とインパクトであるとされますが、この部分でのカウントは、主にジャーナル論文に基づいてなされます。
ただし、分野によってはこの限りではありません。文系の一部領域では、以下の紀要論文もカウントに含まれる場合があります。情報科学の分野では、分野のスピードが速いため、ジャーナル論文よりも国際的に上位の学会予稿論文が重視されることもあります。
●紀要論文
紀要論文は、ある機関が、主に大学が発刊している紀要と呼ばれる学術誌に投稿して、掲載されたものを指します。ジャーナル論文に比べて査読が存在しないか、あっても判定が緩いことが多いため、ジャーナル論文よりは評価されない分野が多くなっています。
一方で、アイデアが先進的すぎたり萌芽的すぎたりして、ジャーナル論文では査読に通らないような、優れているけれども評価が難しい論文の掲載場所としての役割もあります。そのため、紀要論文だからといって、見下したりするようなことはしてはいけません。
●学会予稿論文
学会予稿論文、別名プロシーディングス (Proceedings) とは、学会発表をする際に提出する、簡易な論文を指します。学会発表とは主に、完成前の研究を発表し、意見をもらうための場を指します。そこで、プレゼンテーション資料だけでは内容理解が不十分なこともあるので、そのための補足資料として発表前に提出するのが、予稿論文です。
予稿論文は査読が無い場合も多いですが、きっちりと厳格な査読が行われることもあります。人気や権威のある国際学会においては、下手なジャーナルよりも査読が厳しいものもあり、そのような学会で受理・掲載されたプロシーディングスは、高く評価されます。反対に査読が無いようなものは、専門化のチェックを受けていないことを意味しますので、あくまで参考程度にすべき場合もあります。
●学位論文
学位論文とは、卒業論文(学士論文)、修士論文、博士論文といった、大学や大学院の卒業・修了のために提出されたものを指します。多くの場合、まだ外部で発表されていないか、あるいは既に学会やジャーナルで発表されたものを修正・編纂することで構成されるものですので、直接これを参照することはあまり無いかと思います。
●未刊行論文
未刊行論文とはその名の通り、他のいずれかの媒体で刊行される前段階の論文です。プレプリント (Preprint) やワーキングペーパー (Working paper) と呼ばれます。(一般的には)ジャーナル論文に投稿中の論文原稿を、インターネット上で公開された状態がこれに該当します。ジャーナル論文では査読に時間がかかり、また査読の結果として掲載拒否されることも少なくないため、論文を完成させてから掲載されるまで、短くても数か月、長い場合には数年の月日がかかります。その間に類似した研究が他の研究者から出されてしまうと、論文の新規性が失われてしまいます。これを避ける目的のため、インターネット上で論文原稿を公開するというのが、この未刊行論文の目的です。
未刊行論文を引用する場合は、例えば論文タイトルの最後に (Preprint) と追記するといったように、未刊行であることを示す必要があります。また、未刊行論文がジャーナル論文として出版された場合には、未刊行論文の方ではなく、ジャーナル論文の方を引用する必要がありますので、注意しましょう。
論文の発表媒体のレベル
研究計画の作成やその分野の勉強を行う場合に、先行研究を調査する文献調査を行うことになります。文献調査では、基本的になるべくレベルの高い媒体を選んだ方が良いといえます。これは、レベルの高い発表媒体ほど、査読が厳しく、論文の品質が高い傾向があるためです。同時に、その分野で重視されている研究の潮流や、成果を確認することもできます。
上で示した発表媒体においては、基本的には文献調査においてはジャーナル論文を対象とすることが望ましいといえます。ただし、自分の研究内容や興味に非常に近いものは、その他の媒体であっても詳細に確認すべきです。これは、それらを無視してしまうことで、意図せずアイデアの盗用を疑われる場合があるためです。
また、ジャーナル論文の中でも、ジャーナル自体のレベル感というものがあります。これも分野により様々な慣習がありますが、一般的な話をすれば、まず国際誌の場合、ジャーナルのインパクトを計測する指標が公開されています。これは、Impact factor、CiteScore、SJR指標といったものです。また、これに基づいたジャーナルランキングというものもあります。参考に、以下にSJR指標に基づく分野ごとのジャーナルランキングのリンクを貼りますので、一度あなたが興味がある分野の、国際的に有力なジャーナルを確認してみるといいでしょう。日本語のジャーナルについても、その分野内で暗黙的にランキングがあることが多いです。ただ、それはその分野内の研究者間で共有された共通認識的なものである場合が多いため、興味があればその分野の先生に聞いてみると良いでしょう。
SCImago: Journal & Country Rank: https://www.scimagojr.com/journalrank.php
論文の種類2(論文の内容別)
論文には媒体の種類以外にも、コンテンツそのものにもいくつかの種類があります。ここでは代表的なものを紹介します。
【原著論文 (Original paper)】
論文の最も一般的なものは、原著論文というものです。これはその分野で受け入れられている科学的手順に従って研究を行い、新たな発見を提示するものです。原著論文のなかにもいくつかの種類がありますが、代表的なものは実証研究(Empirical study)による論文と理論研究(Theoretical study)による論文に分かれます。実証研究論文は、データを用いてリサーチクエスチョンや仮説を検証・実証するものです。ここでのデータとは数値的(定量的)なものに限定されず、インタビュー調査等によって得られた意味的なもの(定性的)も含まれます。理論研究論文は、その名の通り理論的な観点から新たな発見を提示するものです。
【総説論文 (Review paper)】
原著論文と対を成すのが、総説論文です。とはいえ、総説論文と比較すればその割合は非常に低いです。総説論文は原著論文とは明確な違いがあります。総説論文とは、特定のテーマを対象として、それまでに発表された研究成果を確認し、整理するものです。ただ整理するだけのものもあれば、そこから新たな研究課題を提示したり、概念化を行う場合もあります(概念化を行う論文は、構成によっては原著論文に含まれることもあります)。重要なことは、総説論文は学位論文として認められないことが多いということです。つまり、大学院の研究計画は、原著論文を作成する前提で記載する必要があります。つまり、研究計画作成の際に総説論文を書き方のお手本にすることはできませんので、その点は注意が必要です。
原著論文の基本的構成(総説論文の構成は様々のため省略)
原著論文には基本的な構成があります。分野により多少異なるものではありますが、ここでは一例を紹介します。それぞれの部分には役割がありますので、論文を読んだり書いたりする際には、これを意識する必要があります。
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イントロダクション: 研究の背景、社会的重要性、これまで明らかにされていないが、重要なことで事象の説明、リサーチクエスチョン、研究目的などを説明するためのパートです。
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先行研究と理論:先行研究の論文を整理して、これまでの理論をまとめ、本研究の内容が新規的であることを説明します。分野によってはイントロダクションに統合されることもあります。仮説検証型研究の場合は、仮説構築の部分はここに含まれます。分野によってはリサーチクエスチョンがここで提示されることもあります。
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手法:研究目的を達成するために、どのようにデータを取り、分析したのかを説明します。
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結果:手法にしたがうことで得られた結果を示し、その内容を解説します。
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考察:なぜそのような結果が得られたのか、得られた結果は学術的・社会的にどのようなインパクトを持つのか、研究の限界と将来の研究はどのようなものか、を考察して説明します。分野によっては結果のセクションと統合されることもあります。
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結論:研究の全体の要約を行う、短いパートです。分野によっては考察と統合されることもあります。
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参考文献:引用した論文等をまとめる部分です。
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付録:論文本体に入れると冗長になったり蛇足になったりする補足的な情報やデータなどを、論文の最後にまとめて提示する部分です。
優れた研究論文とは
優れた研究論文とは、ひとことで言えばインパクトのある研究成果を提示するものであることを意味します。では、インパクトがある研究成果とは、どのような論文により実現されるのでしょうか?以下にその要素を列挙します。
・読みやすい
・ストーリーが明瞭かつ簡潔
・先行研究を十分に調査・理解・引用し、その研究領域の重要性と、自身の研究の学術的重要性・新規性を明確にしている
・手法が新しく、かつ適切
・結果に意外性がある(当たり前のことを検証しました、ではない)
・結果の再現性が明確(データによって示されている)
・結果の適用範囲が明確
・結果の一般化可能性が高い(一般化可能性が小さい≒研究成果が役に立たない)
・(結果論として)インパクトのある媒体(論文誌)に掲載された
・(結果論として)たくさん引用されている
下の2つは論文が出版された後の話ですので、事前になんとかすることはできませんが、それ以外の部分はなんとかできる部分です。研究計画を立てる段階においても、上記を意識することは重要です。
論文の探し方・読み方
文献調査、つまり論文の探し方、読み方には様々なスタイルがあります。ここでは1例を挙げますので、ぜひ実践してみましょう。なお、ここではあえてChatGPTのような生成AIは使いません。生成AIは文献調査において強力ではありますが、ハルシネーションという現象により架空の論文を提示することがよくあります。そのため論文の文献調査に慣れていない人が生成AIを活用することは危険ですので、初心者のうちは避けましょう。
【第一段階】
最初の文献調査の時点で、焦点を適切に絞った論文を探し当てることは困難です。そのためはじめに、自分の興味に合致した論文を特定することから始めます。
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自分の興味に基づいて、論文検索のために、妥当と思われる色々なキーワードを提示して整理しましょう。
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それらを組み合わせてGoogle Scholar(ウェブサイト)から検索しましょう。
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興味がある論文をピックアップしましょう。このとき全文は読まずに、タイトル、アブストラクト、図表等をざっとみて、重要と思うものを残します。
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被引用が多いもの(分野によるが、例えば100以上)はその分野で重視されているものなので、マークしておきましょう。被引用数はGoogle scholarを使用すれば表示されるはずです。
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この段階では10程度をピックアップし、ざっと全体を読みましょう。パワーポイント等で、それぞれの論文情報と、興味を持った点をまとめると、整理できてよいでしょう。
【第二段階】
第一段階により、自分の興味と合致している可能性が高い論文が10程度集まり、その内容を理解できたはずです。これに基づいて、文献調査の精度を高めます。
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初期段階の結果から、興味がある研究対象を具体化し、検索キーワードを再考します。
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Google scholarを用いて、論文を再収集しましょう。ここでは3つの方法があります。
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再考された検索キーワードを用いて論文を検索します。
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興味を持った論文の著者の名前で検索し、その著者が出している他の論文を読みます。
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興味を持った論文の論文が引用している論文を読みます。
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興味を持った論文の論文を引用している論文を読みます。Google scholarにおいて、該当する論文の被引用数をクリックすると確認可能です。
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2の方法で可能な限り多くの論文をピックアップします。50-100程度集まるとよいでしょう。
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全ての論文のざっと全体を読み、自分の興味と関連性が高いものをピックアップしましょう。
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ピックアップした論文を全文詳細に読み、理解しましょう。それとともに、パワーポイントなどを用いて、自分の研究にとって重要だと感じた点をメモし、後から参照できるようにしましょう。
課題
実際に文献調査をしてみましょう。上記の第一段階、第二段階の順番で実施し、研究計画書を作成するうえで引用する候補としての論文を10~20ほど選定してみましょう。
作成者:井上祐樹

