
研究倫理の基本に触れる
研究不正について
研究不正は絶対にしないようにする必要があります。もし、これをしてしまった場合、即座に退学になるだけでなく、指導教員と大学(場合によっては日本もが)が相当な社会的バッシングをくらうことになります。程度によってはWikipediaにあなたと指導教員の名前が載り、永く語り継がることとなります。
このように研究不正は非常に重大なことと学術界では認識されていますが、一方で研究に詳しくない人は何が研究不正かを知らなかったり、軽い気持ちでこれを犯してしまったりすることがあります。ここでは研究に従事するための最低限の知識として、研究不正について紹介します。
研究不正の例
ここでは代表的な研究不正の例を挙げます。
1. 改竄・捏造:データや結果を、都合の良いように書き変えたり、存在しないものを作ってしまったりすることです。
2. 盗用・剽窃:他の媒体から何かを適切な手続きを取らずに利用し、自分のものとしてしまうことです。簡単にいえば、アイデア、文章、図表等をパクることです。コピペも該当します。他の媒体を利用する際には、(適切な)転載や引用のプロセスを取る必要があります。
3. 二重投稿:同じあるいは類似した内容の研究成果を複数箇所に投稿することです。
3の二重投稿は、1と2に比べれば、適切な指導を直接受けている場合は通常生じませんし、研究計画書の作成段階では犯してしまうことは普通はありません。言い換えれば、1と2は研究計画書の作成段階でも犯してしまう可能性があるものです。そして当然、このようなことが研究計画書にて行われていれば、入試においては即座に不合格になります。特に生成AIを利用して研究計画書を作成した場合、捏造、盗用、剽窃を簡単に達成できてしまいます。そのようなことが無いように、十分に注意をしなければなりません。
重要な点として、ミスによる結果の間違いは研究不正にはなりません。もし既に論文が出ていても、取り下げればすむ話です。ただし、気づいたらなるべく早く指導教員に相談して、報告する必要がある。そのまま放置してしまうと、研究不正になってしまう恐れがあります。
盗用・剽窃と転載、引用の違い
研究計画書の作成も含めて、研究活動において他者の著作物を利用する場合には、適切な方法を採る必要があります。これは(適切な)転載または引用といわれる手段になります。以下に、これらと盗用・剽窃との違いを整理します。
【盗用・剽窃】
過去の著作物を、転載・引用の方法を採らずに、自分の著作物で使用することです。転載・引用に当たらないものは全てアウトと思っておくくらいがいいでしょう。
【転載】
過去の著者物を自分の著作物でそのまま使用することで、かつ以下の引用ではないものです。転載には著作権者の許可が必要です。許可を得ていないいわゆる無断転載は盗用・剽窃となり、転載とはみなされませんので、注意が必要です。また転載には新規性がないため、研究や論文は転載だけでは構成できません。
【引用】
引用は研究において最も基本的な、かつ頻繁に用いられる方法です。特に、過去の文献を利用して自身の文章や計画を構築するうえで、欠かせないものです。引用として認められるには、以下の特定の要件を満たせ必要があります。
・出典を明記すること
・引用の適切な方法に従っていること(以下に説明)
・主従関係が明確で、自分の文章が主、引用対象が従であること(まるっと全部、は転載の範囲になる)
引用には、直接引用と間接引用があります。直接引用はそのまま引用することで、引用範囲を括弧で囲うなどして明示する必要があります。間接引用は要約して引用することで、括弧で囲うことはしませんが、どこからどこまでが引用の範囲なのかは、わかるようにする必要があります。
引用について
引用の方法は様々ありますが、文系ではハーバード方式かこれに類するもの、理系ではバンクーバー方式かこれに類するものが多いと思われます。
【ハーバード方式】
本文中の引用部分では、(著者名, 年)もしくは、著者名 (年) のように記述する。前者はその文全体が引用部分である場合に使用し、後者は引用文献を主語にして文章を構築する場合に使用します。著者名は日本語論文なら日本語で、英語論文なら英語で書きます。著者二人の場合は(Tanaka & Saito, 2019) (井上・田中,2022)に、三人なら (Yamada, Tanaka, & Shibata, 2022) (井上・田中・鈴木,2022)、四人以上なら (Inoue et al., 2019) (井上ら, 2019)のように記載します。本文中では以下のように記載することで、文章と引用元の関係を示します。
例1:大学生が大学に来る理由は、勉強をするためではないとされる (田中, 2020)。
例2:田中と斎藤の研究(2020)は、大学生が大学に来る理由は、勉強をするためではないことを示唆した。
【バンクーバー方式】
本文での出現順に、[1][2]のように番号を振ります。以下に例を挙げます。
例:大学生が大学に来る理由は、勉強をするためではないとされる [1] 。
例:田中と斎藤の研究[2]は、大学生が大学に来る理由は、勉強をするためではないことを示唆した。
いずれの方式でも、引用文献はその文献が辿れるように、情報を記載する必要があります。研究計画書や論文の場合は、最後に「参考文献」のセクションを作り、そこに列挙します。ハーバード方式またはそれに類する方式では、アルファベット・あいうえお順に並べます。バンクーバー方式またはそれに類する方式では、本文中の出現順に並べて番号を振ります。書き方の作法は様々ですが、例えば一例は以下になります。
・論文や書籍の場合:著者名、発行年、論文・書籍タイトル、掲載誌・発行元、(ページ番号)
書き方例:田中太郎、山田花子(2022)「大学生の〇〇に関する研究」、大学生研究誌、30巻3号、pp. 12-21.
・ウェブサイトの場合:サイト名、URL、アクセス日
書き方例:大学生の生態について、https…..、2022年5月30日アクセス.
いずれの方式や作法に従えばよいかは、実際のあなたの分野の論文をいくつか読んでみて、それに従うようにしましょう。
引用について生成AIとの付き合い方
ChatGPTのような生成AIに「~~~のテーマで研究計画を作成してください。」と入力すれば、簡単に研究計画書の内容を埋めてしまうことができるでしょう。しかしこれは、完全なる研究不正です。具体的には、盗作と剽窃はほぼ確実に満たします。多くの場合、生成AIはハルシネーションを起こしますので、捏造の要件も満たします。そのため、生成AIに研究計画を作成させては全体になりません。
生成AIで研究計画書を作成しても、書類審査や面接で見抜かれて、受験料や時間を無駄にするだけです。あくまで生成AIはアイデアの壁打ち相手や情報検索のヒントを探すための相手に留めましょう。
課題
研究計画書において、自分の分野ではどのような引用方法を取るべきか、確認してみましょう。簡単な方法は、志望度が高い大学院の先生が書いた論文をいくつか確認することです。実際にインターネットで検索し、引用方法をメモしておきましょう。
作成者:井上祐樹

