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大学院・研究室・指導教員の選び方

研究大学院か専門職大学院か

 

 大学院を選ぶ際には、様々な観点を考える必要があります。まず、大学院は研究大学院と専門職大学院に分かれます。この点を理解することは大学院選びにおいて重要なため、少し詳しく説明します。研究大学院は修士論文を執筆することで修士号を獲得することを目指します。一方で専門職大学院はより実務的あるいは実践的な専門知識を習得することを目指します。例えば、同じ「経営学」の大学院であっても、修士(経営学)を獲得する前者と、専門職学位としてのMBAを獲得する後者では、カリキュラムが大幅に異なります。

 もしあなたが将来的に博士課程進学を目指しているのであれば、このあたりは慎重に検討しなければなりません。これは多くの博士課程においては進学の最低条件に修士論文の執筆を明示的あるいは暗黙的に課しているためで、修士論文が存在しない専門職大学院に進学してしまうと、博士課程進学のために再度研究大学院への入り直しが必要になるためです。ただし専門職大学院であっても、修士論文(あるいはそれ相応のもの)を課している専攻もありますので、カリキュラムをよく確認しましょう。

 

大学院の選び方

 

 大学学部入試においては、受験先を選ぶ基準は、基本的に大学の「格」が大きかったものと思います。まずは希望する専門を決めたら、予備校が出している偏差値表を確認し、自分がそれなりに合格可能性のある大学の中で、受験先を決めたことでしょう。一方で大学院進学には偏差値はありません。一部の上位校を除いて、定員割れしている大学が大多数です。また、学部の私立大学入試のように、国公立大学であっても受験日程が重複しない限り、いくら併願して受験しても構いません。このように大学院入試は、学部入試より遥かに柔軟で、選択肢が多いプロセスとなっています。

 では、どのように大学院を選べばいいのでしょうか?立地や学費といった点を除くとすれば、①指導教員・研究室、②大学の格、③カリキュラムの3つが中心になってくると思われます。以下、それぞれについて説明します。

 

選択基準①:指導教員や研究室

 

 大学院を選択する最重要な要素は、指導教員や研究室であると言えます。 大学学部と違って大学院を選ぶ際には、大学の格(とみなされているもの)よりも指導教員・研究室と自身とのマッチング、また指導教員・研究室の研究力や人柄がより優先されます。これは、大学院生活はほとんどが研究活動であるため、自分がやりたい研究活動ができるか、適切な指導をしてもらうことができるかが、最も重要な点であるからです。

 また、大学教員というのは、例えば学力や研究業績に沿って、上位校(とされているもの)から順に振り分けられるようなものではありません。通常の就職活動と同じように(厳密には少し異なりますが)、求人公募があり、希望者がそこに応募し、そして最適な人材が選考されるという仕組みになっています。そのため、各種の大学ランキングとそこで指導する大学教員の質は、イコールにはなりません。より上位校に在籍したいう考えの人は一定数いますので、ある程度は大学の偏差値と教員の研究能力は相関します。しかしながら、個人が職場としてその大学を選ぶ理由には様々あります。例えば、その町が好きだ、生活基盤が出来ている、大学の雰囲気が合っている、待遇が良い、などです。また、上位校であっても、業績が無くてもコネクションで採用された、あるいは以前は業績があったが採用後に何らかの理由で研究をしなくなってしまった、できなくなってしまったという人も多数います。したがって、低偏差値の大学であっても世界レベルの研究を行っている先生もいれば、逆にトップ校でも全く研究活動を行っていない人もいます。そのため、大学の偏差値=指導教員の質とみなす考えは危険です。

 また、書籍で名前を見る先生や、テレビでよく見る有名人が良い先生とも限りません。もちろん中には研究者として凄い方も多くいらっしゃいますが、一方で学外ばかりに目が向き、学内の仕事がおざなりになっている方もいらっしゃいます。個人の時間は有限ですので、基本的には外の活動が活発ということは、それだけ中での指導が希薄になるというリスクがあると見なすべきでしょう。

 別の観点では、人柄は研究能力とは全く別のものです。これは一般的な会社でも同じことですが、大学教員の中には、人格に問題がある人が一定数います。そして、よほどの問題を起こさない限り、こういった人でも指導資格を失ったりすることはありません。できることに限界はあるにせよ、人柄についても受験前に確認しておくべきでしょう。

 

 ここまでリスクの話ばかりしてきましたが、ではどのようにすればこれらのリスクを下げて、素晴らしい指導教員に出会うことができる確率を上げることができるのでしょうか?確実ではないにせよ、いくつかのできることがあります。

 第一に、研究室もしくは先生個人のウェブサイトがあるかを確認しましょう。無い場合は、学生の受け入れに積極的でなかったり、指導そのものにやる気がなかったりする確率が上がるといえます。また、大学院生の受け入れについて丁寧が説明がある場合には、特に学部生の受け入れに積極的だというシグナルになり、入った後に指導放棄を受ける可能性は減るものと推測できます。

 第二に、定期的に研究成果を生み出し続けているかを確認しましょう。特に、査読付きの学術論文(分野によっては書籍)が途切れずに出ているかを確認しましょう。これらが出ていない場合は、研究活動を行えていない・行っていないということになりますので、満足な指導を受けられない可能性が高まります。

最後に、直接指導教員の先生と面談し、その先生の人となりを確認しましょう。ただし、さすがに初対面の学生に対してハラスメントや高圧的な態度を取る人は稀です。そのため可能なら研究室見学をさせてもらって既存の大学院生と面談し、先生はどのような人かを聞いてみましょう。

 

選択基準②:大学の格

 

 現実的な話をすれば、大学学部は一般的に主に偏差値でランク付けされており、そして大学のランクは就職活動に影響するということは、広く認識されていることかと思います。その是非はここでは置いておくこととして、このような大学のランクによる就職への影響は、大学院の就職活動においても無いとは言えません。例えば上位校の学生を対象とした「〇〇大学在学生専用就活セミナー」というものが開催される場合、大学院からその大学に所属する場合も、大学学部からの入学者と同様に参加することができます。また、大学院から上位校に外部進学した院生が、内部生と就活で区別されたという話は、筆者はこれまで聞いたことがありません。そのため現実的には偏差値でランク付けされた大学の格というものは、大学院を選ぶうえで重要な要素に成り得るといえます。

 ただし、アカデミック就職する場合、つまり企業や公務員への就職ではなく、大学教員を目指す場合には、大学名の影響はより小さくなります。これは、研究業績の方が出身大学名よりも選考において遥かに重要になるためです。ただ、少なくともいわゆる上位の大学院を出たという事実は、学力の証明の一つとみなされる場合はあります。しかしながら、それでも研究内容や研究成果の方が重要度の比重は高いので、指導教員・研究室をより重視した方が良いでしょう。

 

選択基準③:大学院のカリキュラム

 

 まず、専門職大学院の場合は研究活動が無いか、あっても比重が小さいことが多いので、カリキュラムは重要度が高くなるでしょう。一方で研究大学院においては、修士課程では授業を1年で取りきる場合も多く、博士課程においては授業そのものがほとんどありません。とはいえ、全く興味が無いカリキュラムに参加することは有益ではないでしょう。いずれにしても、パンフレットやウェブサイトを確認し、自分の興味があることを学ぶことができるカリキュラムになっているかを確認することが必要です。

 

大学院の選び方のまとめ

 

 まとめると、大学院を選ぶ優先順位としては、①②③のようになることが自然かと思います。ただし、大学院受験の目的は様々でしょうから、これらの優先順位が変わることは問題ではありません。一定数の受験生によっては、②が最優先事項になる場合も多々あるようですが、それでも①への検討を欠かすことは非常に危険です。②と③は基本的に事前情報通り、期待通りのものになることがほとんどですが、①はそうではないからです。このことを念頭において、指導教員・研究室選びと検討は入念に行うことをお勧めします。​​

作成者:井上祐樹

​研究者情報:https://researchmap.jp/yuki_inoue

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